”孤独”から一歩を踏みだすスキンケアを分かち合う_化粧品メーカーと化粧品製造工場の違いを知る(1)_Story4
私が初めて、Mont make(モンメイク)という会社と出会った時に、社長が言った言葉を思い出しました。
キドさん、私たちは、
この化粧品原料を、
こうやって混ぜて、
この容器を使って、
この容器に化粧品をこのように入れて、
キャップを締めて、
この箱に入れて、
仕上げてください。
と依頼されれば、ちゃんと化粧品をつくることができます。
しかし、
何もない「0=ゼロ」からは、化粧品をつくることができない
ので教えてください。
はい、がんばります!
その場ではこのように答えた私ですが、化粧品「メーカー」の経験しかなかったので、Mont makeの前身の化粧品製造工場の社長が言うこの言葉の「本当」の意味が分からなかったのです。
分からないまま、これまでの会社で経験した通りに、商品の発売に向けての最初のステップである、顧客の悩みと願い、
孤独から一歩を踏み出す
をキーワードに商品づくりを始めるため、ブランドの方向性と商品の概要を資料にまとめました。
社内の会議で、この資料を説明し、無事に会議を終えましたが、なぜか社内の温度感が低く感じ、質疑応答も少ない…
これまで経験した会社では、自社のオリジナルブランドの立ち上げとなると、良い意味で「喧喧諤諤(けんけんがくがく)」な議論が飛び交い、互いの精神を食い合い、温度感が高めの状態を維持しながら、商品の発売までのステップを乗り越えていました。
違和感を感じながら、次の会議、次の会議と議論を進めるのですが、やっぱり温度感が低い…
その頃の私は、社内に人脈が無かったので、ざっくばらんに話ができるカワバタを頼ることにしました。
今、化粧品製造工場としてやっている仕事の内容
社内で働く人のスキルや経験
会社の歴史と歩み
色々と教えてもらう中で、少しずつこの会社の全体像がわかり始めました。
お客さまの悩みを解決する、こんな商品をつくりたい!
このようなアイデアや発想は、子どもや発想が柔軟な人であれば誰にでもできることです。
しかし、そのアイデアや発想を「商品」という形に具現化するためには、その業界ごとの専門的な知識や経験、形を具現化するステップごとの知識や経験が必要になります。
私は、商品が形になるまでのステップを細かく書き出してみました。
そのステップを提出し、社内の反応を見ましたが…
やっぱり、温度感が低い…
何が足らないのだろう?
何が分からないんだろう?
悩みに悩みましたが、やっぱり答えが出ません。
私とこの会社の間にある”溝”が何なのか、やっぱり分からないのです。
でも一つだけ、私たちをつなぐ共通点があります。
それは、
化粧品というモノをつくってきた
という経験です。
恐らくこの会社の人たちも、
自分たちの工場で製造した商品がお店に並んでいたら「うれしい」だろう
自分たちの工場で製造したものをお客さまが買っているのを見たり、友だちが使っていたら「うれしい」だろう
自分たちの工場で製造した商品を自分で使ったら「うれしい」だろう
と思ったのです。
悩みながらも私は、こんな仮説を立てました。
この会社の人たちは、
化粧品を製造するスペシャリスト
ではあるけど、
化粧品を使いこなすスペシャリスト
では無いんじゃないか?
化粧品”メーカー”になるためには、お客さまの”7つ”の行動に習って商品を企画、開発、設計をする必要があります。
買うまで
買って自宅に持って帰るまで
最初に使うまで
次の日も、その次の日も使い続けるまで
使い終わって捨てるまで
使い終わった後に、もう一度買うまで
何度も繰り返し買い続けるまで
また、お客さま以上にこの7つの行動を深読みしながら、”化粧品を使いこなす知識”がいります。
製造は、”買うまで”のステップの一つの工程であり、当然、欠かすことができない工程ではありますが、メーカーになるためには、その他にやらないといけないステップがたくさんあるのです。
しかしまずは、お客さまが化粧品を買うまでのステップ、言い方を変えると”商品を形にするステップ”を進めないと、メーカーとして仕事を始めることができません。
商品を形にするにはいくつものステップという山を乗り越える必要がありますが、その中でも一番大きな山が、
”製造”
という山だと私は考えています。
私はこれまで企画職を続ける中で、この”製造”という山に進む前に、問題になりそうなことはできるだけ潰し、製造にたずさわる人たちがストレスを感じることなく”スムーズに製造できる”状態にするということを鉄則にして、仕事をしてきました。
それはなぜかというと、メーカーで働く人の中で、
製造にたずさわる人はもっとも”お客さまに近い存在”だ
という認識があるからです。
化粧品メーカーの製造で働く人は、圧倒的に女性の従業員が多く、さらにパートやアルバイト従業員がほとんどです。
パートやアルバイト従業員であっても、働く会社の商品に対する愛情はあるでしょうが、社員に比べるとその愛情の度合いは低いと思われます。
また自分たちが生活をする中で、この商品が必要なのか必要でないのか、自分の財布の紐と天秤をかけながら、お客さまの感覚と同じように、自身が製造した商品であったとしても、ドライに判断します。
私は製造に立ち合うとき、パートやアルバイト従業員の表情を読み取り、会話に耳を傾けるようにしています。
彼女たちの表情や言葉の中には、その商品の問題点や売れない理由になるお客さまの「不満」があるからです。
だから企画職の私は、製造にたずさわる人たちが、
この商品を使ってみたい!
この商品が発売されるのが楽しみ
と言っているのを聞くと、売れる商品の”一歩”を踏み出すことができた、と一息がつけるのです。
そうだ、
この会社の従業員、ほとんどがパートやアルバイト従業員である170名に、
”孤独”という商品のキーワードに妥当性があるのか?
”スキンケア”の悩みや意味の理解度はどのくらいあるのか?
アンケートで聞いてみよう!そう思いアンケートを作成しました。
アンケートを回収し、その内容を読み取っていくと、やはり、ほとんどの従業員が「お客さま」そのものでした。
また、スキンケアを衣食住のように楽しむことなく、まるで作業工程のように感じながら、”なんとなく”使っている人が多かったのです。
私は、この会社の従業員が”メーカーの従業員”になるために、”化粧品”という商品を製造するだけではなく、
化粧品を使う喜び
を一緒に共有しようと思いました。
そして、そう、人であれば誰でも持っている欲求、
キレイになりたい
を、自分たちがつくった商品で、
キレイになった
にしないといけない。
スキンケアという商品を使うことで感じる、カワバタが教えてくれた、
気持ちいい
という感覚。
そして、
使い続けることで肌が応えてくれている、
喜んでくれているようなあの感覚。
また、
お手入れをするときに感じるゆっくりとした時間とぬくもり。
それをまずは社内の人、製造にたずさわる人に伝えようと思ったのです。
商品の企画とともに、
化粧品という”モノ”を使うことで得られる喜びを
キレイになったという実感を
すべての従業員と、この価値を共有するためには長い時間がかかりそうだけど、まずはこのミッションを一つの到達点にしよう。
新商品の企画を進める中で、さらに企画を深めることができた瞬間でした。
次は、さらにアンケートの内容を深く読み取っていこうと思います。
株式会社 Mont make キド